おじいさんは彼女の会社のやり方に納得がいかずに電話をかけてきたようだった。彼女は小さなチームを率いているので、ふだん担当していない相手でもそうやってかけてくることがあるらしい。私ねえ会社で「シルバーキラー藤井」って呼ばれてるんだ、おじいさんとおばあさんの相手が得意だから。彼女はそう言って、私たちは笑う。
なんかこつがあるのと私は訊く。ない、と彼女はこたえる。特別なこつは要らない、彼らの言い分を頭ごなしに否定しないでちゃんと聞いてそれから現状を説明すればだいたいわかってくれる。うちの会社に建物を預けているのは彼ら自身の意志だけれど、でも管理会社なんて彼らの長い人生からしてみたら「後からやってきてごちゃごちゃ言っていろんなことを押しつけてくる連中」という側面もあるわけ。だからね、契約上はこうですって言って押し通すのがいちばん良くない、意固地になっちゃう。
彼らはそれで電話をかけてくるんだけれど、彼らは個別の要求を、たとえば今回だったら自分の指定した業者さんに冷房の修理をさせたいってことなんだけど、それを絶対のんでほしいと思ってるんじゃないんだと思う。彼らが必要としているのは対等と尊重の感覚なんじゃないかな、そうしてそれはちゃんと伝わるものだし、それが伝わればこちらの事情も理解してくれるよ。みんなそんなめちゃくちゃな人間じゃない、ビジネスとして成立しているような内容なら、話せばだいたいわかる。